AppleのATTとは? アプリトラッキング許可の脅威を解説

Appleが4月20日に開催したオンラインイベント「Spring Loaded.」で、iOS14.5バージョンをリリースすると発表しました。iOSのアップデートはこれまでにも行われてきましたが、今回は一味違っており、マーケターを含む広告業界に激震が走りました。

内容を簡単にまとめると、ATT(AppTrackingTransparency)と呼ばれるアプリのトラッキングの透明性について、ユーザーの許可制になるということです。

このAppleのATTについてマーケターはしっかりと把握した上で、対応を変えて行かなければいけないので、丁寧にご説明していきます。

AppleのATTとは

AppleのATTとは、各ユーザーがApp Storeのアプリ内のトラッキングを許可しない限り、iPhoneやiPadといったApple端末の広告識別子(IDFA:Identifier for Advertisers)が取得できずにトラッキング不可となります。ATTの適用日は、4月26日以降からでApp Storeで公開されているすべてのアプリが対象となります。

今後、Apple storeのアプリでは以下のような「トラッキング許可」の表示がされます。

こちらで「許可:Allow」をユーザーが選択すれば今まで同様にトラッキングすることができますが、「Appにトラッキングしないように許可しない:Ask App Not to Track」を選択した場合は、トラッキング不可となります。

つまりこれはデジタル広告全てに影響を与えることになり、今まで実施していたGoogle広告や、FaceBook広告、Instagram広告、Twitter広告などへの影響が計り知れずに未知の状態です。

そのため4月26日の適用された後に自分達の広告の運用状況を見た上で対策をとっていく必要があります。

Facebookなどアプリ提供者からのApple ATTへの批判

AppleのATTに関しては、Facebookなどの広告収益がメインのアプリ提供者から大きな批判が出ています。

アプリ提供者は良いアプリを提供して、それを目的に集まるユーザーに対して広告を出すことで、お金を得ているビジネスモデルです。つまりその広告をAppleによって独占されてしまうリスクがあり、それを批判するしか方法がありません。特にFacebookは、ユーザーの生年月日や職場などのデータを活用したターゲティング広告に強みがあるため、今回のATTによって莫大な損失を与えるという意見もありますし、その他の多くの企業のビジネスモデルに大きな影響をもたらします。



実際にGDPR(General Data Protection Regulation)と呼ばれる「EU一般データ保護規則」によって、Cookieなどによるトラッキングはユーザーの許可をとる動きになっています。そのためヨーロッパのウェブサイトを見ると必ずCookie情報の取得で「Yes / No」が表示されるようになっています。

ヨーロッパが先駆けて実施されていますが、今後世界的にトラッキングすることは個人情報取得にもつながるという認識になっていることから、AppleのATTの動きは必然的に見えますし、合理的かと思います。しかし、Facebookはその状況を知った上でAppleのATTを批判しているのです。

なぜならウェブサイトに関してはCookie自体の取得をユーザに求めるのですが、それはウェブサイト側の媒体がどの広告メニューを使用していも同じように表示されます。しかしAppleのATTは、Apple Store内のアプリには基本的にAppleの広告を使うように命令が出されたようなものになります(表上では言っていないですが・・・)。

ここをもうちょっと紐解いていくと、AppleのATTは大きく2つの点で批判が集まっています。

ATTが批判される理由①:検索広告がAppleの方が有利で独占する

App Storeの検索ページにあるオススメ広告(レコメンド広告枠)で大きな差が出やすくなります。

Appleの検索広告は、他プラットフォームのアプリ内広告よりもメリットがあるため、多くのデジタル施策を行っているマーケターは効果の高い方法を選択します。そのためマーケターは、必然的に効果の高いApple 検索広告を選択して、その結果、広告枠をAppleが独占してしまうことになります。

ATTが批判される理由②:ATTの影響が少ない唯一の企業はApple

ATTの影響はいきなりではなく、徐々に各メディアに与えていきます。なぜなら批判の理由①でもお伝えしましたが、マーケターは効果の最適化・最大化を計っているため、しっかりと効果測定を行います。

効果が出ない場合は、その媒体への広告予算を削減するか、無くすかの選択になり、増えるといったことは到底考えられません。「広告予算が減少=媒体の売上減少=アドテクベンダーの売上減少」といった負のループに入っていきます。



しかし、唯一ATTの影響を受けずらい企業は1つだけあります。それはプラットフォーマー兼デバイス提供者のAppleです。

Appleは広告収入がビジネスモデルではなく、iPhoneなどのApple製品やApp Storeの売上の割合が非常に大きいです。そのためユーザー目線でのATT適応は、Apple製品が欲しいと思ってもらえる戦略とも考えられ、デバイスの売上が上がる可能性も秘めています。

また、Apple Storeのアプリがユーザー側にとって不必要な広告は許可せずに表示されないとなると、無料アプリの淘汰が始まります。なぜなら無料アプリは広告収入がメインのため、アプリ自体を無料で提供できます。有料アプリは広告収入ではなく、課金してもいいとユーザーが思えるほどアプリ自体に魅力があります。この点を踏まえてApple側から考えると、アプリの内に表示される広告収入は全てアプリ提供者に入り、Appleは1円も入りません。しかし、有料アプリは売上の2〜3割がAppleに入ります。

これが意味することは、AppleのATTによって有料アプリの売上の手数料とデバイスの売上増加、Apple直接の広告枠売上の3つが収益の増加要因と考えられます。

またもっと厳しく考えてみた場合、iOSのデータはデバイス提供者のAppleが持っているものであるため、唯一ユーザーの同意を得ることなく利用できるのはAppleとなります。

上記の点からFacebookなどの媒体は大きくAppleの対応を批判しています。

Apple CEOのティム・クックのATTに対する反論

Facebookなどの各社からの非難に対して、AppleのCEOであるティム・クック氏は「ATT(AppTrackingTransparency)は、アプリやウェブサイトの追跡をユーザーに選択肢を提供するだけ。そもそもユーザーが知らずの内にデータを取得されて、本来購入する気のなかった商品を購入してしまう可能性もある。そのためユーザーには選択肢を与えてあげる必要があり、デバイス提供者としての使命でもある。」と語っています。

これによってAppleは顧客志向であることを訴えており、それを批判しているFacebookなどは顧客ではなく自分達の売上しか考えていないように映ってしまいました。

アメリカの96%はトラッキング拒否する結果

iOS14.5のリリース以降のアメリカでの調査結果になりますが、アプリデータ調査会社Flurryによると、わずか4%の米国ユーザーしかトラッキングを許可していないことが判明しました。

これは驚きの結果となっており、予想以上にユーザーはトラッキングを拒否する傾向にあり、アプリやウェブサイトが騒ぐのも頷ける結果です。

私自身もそうですが、デカデカとトラッキング許可が表示されれば、反射的に「許可しない」を押してしまいますよね。許可していいことってあまりないと思ってしまうので、この結果も納得しました。



ユーザー側でのATT一括拒否設定の方法

ATTによって毎回アプリ毎に許可するかどうかを押していくのはとても面倒です。そのため「一括で許可する/許可しない」を設定できる方法をご紹介します。

ATT一括設定手順① 設定アプリのプライバシーを開く

まずホーム画面に置いてある設定アプリを開いてください。

ATT一括設定手順② トラッキングを開く

プライバシーを押した後にトラッキングがあるのでこちらを開いてください。

ATT一括設定手順③ APPからのトラッキングを要求許可をOFF

こちらの選択肢の「Appからのトラッキング要求を許可」の箇所をOFFにするだけで一括で設定が完了します。





アプリ開発者がするべき対策方法

AppTrackingTransparencyフレームワークの利用必須

アプリやウェブサイトにはAppTrackingTransparencyフレームワークを用いて、ユーザーにトラッキング許可の可否を取得する必要があります。ユーザーがオプトインしない限り、IDFAの取得や、クロスWebサイトおよびクロスアプリトラッキングができません。

社内でIDFAの使われ方を調査する

今までIDFAを取得して、どのように、何のために使っていたかを把握してください。ユーザーのオプトインが取れない限り、IDFAを取得できなくなるため、その時のデメリットやインパクトをあらかじめ理解して対処しておく必要があります。

そのデメリットとインパクトに対して、どのような戦略をとるのかは会社の判断になってくるため、一担当者としての判断ではなく、経営層を巻き込んで決める必要があります。

AppleのATTとは?のまとめ

Appleが4月20日に発表したiOS14.5バージョンリリースのAAT(AppTrackingTransparency)による影響を理解いただけましたでしょうか。広告業界のみならず、媒体やアプリなどのように広告収入がメインのビジネスモデルは非常に怖いものがあります。

Facebookや各ベンダーとAppleとの対抗は続くと思いますが、Appleがこの強硬姿勢を崩すことは考えづらいです。なぜならAppleはあくまでユーザー目線での理由によって今回ATTを適応させたからです。

そのため今後は、ATTによってIDFAを取得できずにどのようにビジネスを展開していくかを考えて実行しなければいけません。

ユーザー側としてはアプリ毎にトラッキング許可の可否をやるのはめんどくさいと思うので、もし一括で拒否したいのであれば設定アプリからやっておけばいいので楽です。

今後のAppleの動向をチェックしながら対応していくのが良さそうですね。

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